
株式会社トランスコスモス・アシスト
31-50人(今回お話しを伺った人)株式会社トランスコスモス・アシスト 業務サービス部 三橋 円
【株式会社トランスコスモス・アシストはどのような組織で、障害者雇用においてどのような仕事をお任せしているのですか?】
株式会社トランスコスモス・アシストは、トランスコスモス株式会社の特例子会社として、2005年4月に設立されました。知的障がい、自閉症・発達障がい、精神障がいのある方を雇用し、事務処理サービスを行っています。親会社トランスコスモスから各種データ入力や封入・発送準備作業、シュレッダー作業などの依頼を受け、当社内や親会社内で業務に対応しています。また、廃棄書類から作った再生紙を利用し、カレンダー・ノートなどの作成にも力を入れています。このような事務的職種には、自閉症や発達障がいの方の「特性」が適している仕事が数多くあります。
【今回の取組(週10~15時間程度の短時間&リモート勤務)について教えてください】
長時間労働が難しい方でも対応が可能な業務の創出を目的として、親会社トランスコスモスのノーマライゼーション推進統括部と共同でOriHime(遠隔操作ロボット)による受付業務をスタートさせました。2023年秋頃からトライアルを重ねて準備を進め、2024年7月にトランスコスモス「CXスクエア札幌大通公園」「BPOセンター札幌狸小路イースト」共用の受付に第一号のOriHimeを設置しました。当社と親会社所属の障がいがある社員で構成された受付対応チームが毎日交替でOriHimeを遠隔操作し、お客様の応対を行っています。現在は週10~15時間の短時間勤務の方が原則1時間交替で一日2~3回対応に入ります。静かな環境下での対応が望ましいため、特に短時間勤務者には社内ではなく自宅で業務対応をしていただいています。
《受付対応のながれ》
センター受付に設置されているOriHimeにチームメンバーが自宅から遠隔で接続し、カメラ・マイク・スピーカーを通して、お客様とコミュニケーションを取りながら受付対応を行います。その後お客様からお聞きした情報をセンター担当者にチャットですみやかに取り次ぎ、対応が完了します。
【この取組を開始するにあたり、準備されたこと/工夫があれば教えてください】
《① 開始準備》
まず、この取組の実施を判断するため、当社と親会社の既存社員によるトライアルチームを立ち上げ、オリィ研究所様のご協力も得て2023年から合計3回のトライアルを実施しました。そのなかでOriHimeによる対応方法や体制、ルールをブラッシュアップしていき、一定の運用目途が立ったことから、本格導入に向けて準備を進めることになりました。
採用活動に関しては、週10時間~15時間の短時間勤務者の雇用が初めてだったこともあり、ハローワークや近隣の就労支援機関にご助言をいただいて方針を検討し、開始しました。複数回の説明会を開催後、希望者にはOriHime操作体験の機会を設けたうえで選考を実施し、最終的に週10~15時間程度の勤務を希望する3名のメンバーが新たに入社しました。
実際の受付業務が始まる前には、応対マニュアルにしたがって何度もロールプレイを重ねてもらうことで、チームメンバーの不安を解消できるように準備しました。
《② 業務開始後》
業務対応時にはイレギュラーなケースでも対応者が困ることのないよう、相談役としてリーダーが同時にOriHimeに接続し、2人体制で遠隔対応しています(※「シフトイメージ」)参照)。体調不良などによる突発的な欠勤があっても、兼任者を含めたチームメンバーがバックアップに入れるように配置しており、安心して就業できる体制となっています。また、働きやすいチーム作りのため、それぞれの障がいや得意不得意、配慮してほしいことなどをチームメンバー全員で発表・共有する機会を設けました。自分だけでなく他のメンバーにも目を向け、お互いに力を発揮しやすい環境にしようという意識が高まったと感じています。さらに、お客様にもこの取組をご理解いただけるよう、OriHimeでの遠隔対応について受付内にご案内の看板を設置しています。
《シフトイメージ》
【この取組の社内・社外での反響/反応はどのようなものでしたか?】
《受付対応チーム内での感想・意見》
まず第一に、OriHimeがとにかくかわいいという感想が多く聞かれました。それが魅力で求人に応募してくださった方もいました。既存社員のなかには以前からOriHimeに興味を持っており、障がいを持った自分がこの業務に携われることが嬉しいと言ってくれたメンバーもいます。それぞれがこの業務に意義や魅力を感じ、チームメンバーとして関わってくれているように感じます。開始当初はとにかく緊張感が強く、マニュアル通りに対応することで精一杯だったようですが、数ヶ月の経験を経て、メンバーそれぞれの個性が出る対応が見られるようになりました。相手や状況に応じて少しずつセリフや応対を変え、最適な対応を心がけています。現在はメンバーからの自主的な情報共有や提案もあり、チーム全体でのスキル向上が感じられるようになってきました。
《社内外=受付に来られた方の反応・反響》
開始当初はOriHimeへの戸惑いが見受けられることもありましたが、対応者のスキルが上がるのと同時にOriHimeを介した受付のスタイルが確立されてきたことで、現在は興味を持って質問してくださる方や、ご用件だけでなく二言三言の会話を楽しんでくださる方もいらっしゃいます。通りがかりの社員と挨拶を交わす場面も増え、社内外で受け入れられてきていることを感じます。
【今後に向けての意気込み/新たな展望があれば教えてください】
現在の受付業務は、私を含めた支援スタッフが管理を行っています。開始から約一年が経ち受付対応がスムーズに行われているため、今後は障がいのあるメンバーを中心として運営できる体制をつくりたいと構想を練っているところです。支援スタッフによるサポートは維持しつつ、障がいのあるメンバーがより一層活躍できるチームを作っていけたらと考えています。まずはその新たな体制のもとで、現在の札幌拠点における受付業務が安定して稼働することを目指します。さらにその先には、対応拠点を増やすことも視野に入れ、OriHimeを拠り所としてメンバーの活躍の場をさらに拡大できるよう、チームと業務の発展に向けて検討を進めていきたいと考えています。