インクルーシブ教育

海を越えてシンガポールで教育プログラムを実施 — シンガポール日本人学校

【導入の経緯・講演の経緯】
2025年10月8日、シンガポール日本人学校中学部の生徒約400名を対象に、オンラインで教育プログラムを実施しました。
オリィ研究所としては、海を越えて海外の学校で授業を行うのは今回が初めてです。その様子をレポートします。
今回の実施に至ったきっかけは、同校の道徳の教科書でオリィ研究所やOriHimeの取り組みを知っていただいたことでした。
分身ロボットカフェで働くOriHimeパイロットの方から直接お話を伺うことで、それぞれの背景や思いを知り、
「自分の能力を発揮して社会に参加することの喜びや充実感」に気づくこと、そして「社会に貢献する意欲」を育むことを目的として講演を行いました。

 

【実施の模様】
■オリィ研究所の理念と事業の紹介
まずは、オリィ研究所が掲げる理念である「孤独の解消」について、そしてその実現を目指してどのような事業を行っているのかについて、社員がZoomを通じて説明を行いました。

■OriHimeパイロットの講演

続いて、教科書にも取り上げられ、今回のご依頼のきっかけにもなったOriHimeパイロットに登壇いただきました。
教科書だけでは伝わらない、パイロット自身の葛藤や挑戦のエピソードを交えたお話に、生徒の皆さんも真剣に耳を傾けていました。

■反転体験:シンガポールからカフェDAWNにログイン!
講演の翌週には、お昼休みの時間を使って、シンガポールから東京の「分身ロボットカフェ DAWN」に設置されたOriHimeへ接続し、遠隔操作体験を実施しました。希望者が集まり、OriHimeを操作してカフェのお客様やスタッフと交流。海を越えても人とつながることができる、テクノロジーの力を体感していただきました。

■生徒・先生からの感想
「オリィさんが出会った16歳の方の“自分は〇〇をするために生まれてきた”という言葉が、いつも優柔不断で行動に移せない自分の心にとても響きました。」

「今までの講演で一番ためになるお話でした。受験期という人生の方向を決める時期に、自分の意思や周りの環境を大切にしたいと思いました。自分にはない視点から物事を考えられる人になりたいです。」

このように、生徒たちにとって、今後の人生に大きな影響を与える貴重な講話となりました。また、教職員の皆様からも「教員としてだけでなく、一人の人間としても多くの気づきを得られた」との声が寄せられました。

 

■まとめ
今回が初めての海外オンライン講演でしたが、画面越しでも「思いが確かに届いている」と実感できる時間となりました。オリィ研究所は、今後もこのような教育プログラムを通じて、 未来を担う子どもたちが社会について主体的に考える機会を創出し、テクノロジーと社会をつなぐ活動を続けてまいります。

多様な視点と出会う教室 OriHimeによる交流型学習の実践

愛知県瀬戸市にある瀬戸SOLAN学園初等中等部(理事長:長尾幸彦)では、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を活用し、身体に障害のある方々との交流を目的とした遠隔授業に取り組んでいます。


【学校での活用方法】

北海道、九州、大阪に住む身体に障害のある男女4名のパイロットが、日替わりでチューターとして参加しています。はじめは、登校時に児童たちがあいさつを交わす、コミュニケーションのきっかけとして分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を活用し始めました。

子どもたちがOriHimeに慣れてきたタイミングで、「道徳」や「生活」、「プロジェクト学習」などの授業にも適宜取り入れています。学校では、「授業に同級生や先生以外の“大人の視点”が加わることで、子どもたちにとって新たな学びの刺激になるのではないか」との仮説を立て、この取り組みを試行し始めたそうです。

道徳の授業では、教科書教材『道夫とぼく』を使い、「誰に対しても公平に接することの大切さ」について考えました。
この授業には、福岡から参加したパイロットの亮さんがOriHimeを通じて登場。仲間はずれをしたこと・されたことの経験や、教材に関する問いについて、児童たちと共に語り合いました。

また、プロジェクト学習では、北海道在住のパイロット・由紀さんが参加。子どもたちが進めている、学校周辺の生き物を調べてまとめる「デジタル Nature Map」の進捗を報告したり、困っていることの相談に乗ってもらったりしました。ある男子児童が、タブレットで撮影した写真をOriHimeに見せながら「この写真はヒメカメノコテントウだよ」と説明すると、由紀さんは「どうやって名前を調べたの?」「北海道ではあまり見かけないテントウムシだね」と返答。質問に答えるために子どもたちが図鑑を開いて調べるなど、対話を通じて自然に学びを深めていく様子が見られました。

 

【教員の声】

パイロットの皆さんは、子どもたちにとても温かく語りかけてくださるため、子どもたちも自然と会話が弾みます。別のグループへ移動する際には、「もう終わりなの?」「次はいつ来てくれるの?」といった声が上がるほどでした。
日頃、長い時間を共に過ごしている私たち教員だけでなく、OriHimeを通じて遠隔から授業に参加してくださる方々など、多くの人が授業に関わることで、子どもたちは知識や技能だけでなく、感情の豊かさも育まれていくことを改めて実感しています。また、共に時間を過ごす中で、障害への理解も自然と深まっていくことを期待しています。