(写真)技術部の開発会議の様子(技術課長はOriHimeで参加)
社員の働き方を諦めない東阪電子機器が選んだ、
新しいチームコミュニケーションのかたち
介護や育児など、家庭の事情によって “働きたくても職場に行けない” 状況に置かれる社員が増えています。
特に、チームの中心を担う立場の社員が長期間出社できなくなると、本人のキャリアだけでなく、組織全体にも大きな影響が生じかねません。東阪電子機器株式会社でも、技術課長の藤原様がご家族の介護のため通勤が困難となり、フルリモート勤務へ移行しました。業務自体はオンラインで遂行できる一方で、「フロアにいられないことで仲間との距離を感じる」「会話の“温度感”がつかめない」といった課題が生まれました。こうした“見えない壁”を取り除くために導入されたのが、分身ロボット OriHime です。藤原課長が自宅からOriHimeを操作すると、まるで本人がフロアにいるかのように同僚と自然に会話が生まれ、チームの空気もこれまで通りに戻っていきました。本記事では、実際にOriHimeを活用されている東阪電子機器様に、導入の背景と効果、そして働き方の多様性に向けた同社の想いを伺いました。
インタビュー:「出社できない」現実と、見えにくい孤独 (技術課長 藤原様)
Q1. 現在の勤務状況と、当初の課題を教えてください。
A. 私は2012年の夏から、兵庫県西脇市でリモート勤務を続けています。
大阪に会社があるのですが、一人暮らしをしていた父の体調が弱り、介護のために実家へ戻る決断をしました。
その際、当時の上司から「リモートという形で続けてみないか」と提案をもらい、会社も自然な形で受け入れてくれました。
結果的にリモート勤務は13年ほど続いています。業務自体はオンラインで問題なく進められていましたし、コロナ禍を経て環境も整いました。ただ、チャットや電話だけでは、職場の雰囲気や部下の表情、仕事の進み具合の“温度差”がどうしても分からない。自分だけがフロアにいないことで、存在感が薄れていく感覚もありました。また、部下の立場からすると「いざという時に現場にいない=頼りにくい」という思いもあったと思います。
仕事は回っていても、気持ちの面で距離が広がっていることに不安を感じていました。
「あ、課長が来た!」OriHimeが生んだ自然な存在感 (技術フロアの同僚の皆さん)
Q2. 課長がOriHimeで“出社”すると聞いたときの率直な気持ちは?
A. 正直なところ、最初は「画面越しとそんなに変わらないのでは?」という印象でした。ロボットを介したコミュニケーションが、どこまで日常に溶け込むのか想像がつかなかったんです。
Q3. 実際に一緒に働いてみて、どんな変化がありましたか?
A. 使い始めてすぐに印象が変わりました。フロアにOriHimeが立っているだけで、「あ、課長がいる」という感覚が自然に生まれます。設計の相談をするときも、近くにいる感覚で声をかけられますし、課長の方から「今ちょっと困ってそうだね」と声をかけてもらうこともあります。会議のときだけでなく、日常のちょっとしたやり取りが増えたことで、コミュニケーションのスピードも質も上がったと感じています。
「もう一度チームに戻れた」心に生まれた変化 (技術課長 藤原様)
Q4. OriHimeを使ってみて、心境の変化はありましたか?
A. 大きく変わりました。導入前は、職場の状況が見えない不安や、自分だけが離れている感覚が常にありました。でも、OriHimeを通してフロアの様子が見えるようになり、精神的な距離がぐっと近づいたと感じています。私は、OriHimeを毎日常時接続(フル)で使用しており、朝のミーティングではOriHimeから発言し、定時まで常に接続してパソコン画面で見れる状態にしているんです。そうすると、職場の「音」が聞こえてくるんです。人の話し声だけでなく、エアコンの音や雑音、外を走るバイクや車の音まで入ってくる。それがあることで、「同じ空間にいる」という感覚が生まれました。その雑音が妙に心地いいんです。今では、OriHimeは仕事をする上で欠かせない存在になっています。
Q5. 今後の働き方についてどのように考えていますか?
A. これからもOriHimeを使い続けたいと思っています。介護という事情があっても、チームの一員として自然に働き続けられる。この選択肢があることは、自分にとっても、これから同じ立場になるかもしれない誰かにとっても大きな意味があると思います。
(写真) OriHime越しでの朝のミーティング風景
働き方の多様性を支えるツールとして (人事・D&I推進担当)
Q6. 御社では、出社困難な社員の働き方をどのように支援していますか?
A. 藤原が10年以上前からテレワークをしていることについて、会社としては特別なことだとは捉えてきませんでした。必要だからそうしている、というごく自然な判断です。本格的なテレワーク制度の整備はコロナ以降ですが、就業規則やPC環境の整備を進め、誰でも選択できる形を整えてきました。
Q7. 導入してみてどんな効果を感じていますか?
A. OriHimeを導入してから、藤原の存在感が明らかに強くなりました。フロアでメンバーがOriHimeに話しかけ、リアルタイムでやり取りしている光景をよく目にします。制度だけでなく、「どう寄り添うか」という観点で考えたとき、非常に有効なツールだと感じています。
社員の想いから生まれた「OriHime専用ユニフォーム」
同社では、紳士服営業出身の社員が、藤原課長のためにOriHime専用のユニフォームを作成したそうです。
「課長にちゃんと“出社”してもらいたいから」という温かい気持ちから生まれた取り組みで、フロアの雰囲気もぐっと柔らかくなったといいます。


まとめ:離れた場所でも“同じ空間で働ける”という選択肢を企業に
介護や育児など、予期せぬ事情で通勤が難しくなる社員は、今後ますます増えていくでしょう。
東阪電子機器様の事例が示すように、「オンラインで仕事ができるかどうか」だけでなく、 「同じ空間にいる感覚をどう取り戻すか」 が、社員のメンタル面やチームの一体感に大きく影響します。OriHimeは、出社が難しい社員が仲間の存在を感じながら働けるだけでなく、フロアにいる社員にとっても、その人の“居場所”を自然に感じられるツールです。
離職を防ぎたい、社員のキャリアを途切れさせたくない、柔軟な働き方を本気で実現したい。
そんな企業にとって、OriHimeは力強い選択肢となるはずです。




