遠隔授業

多様な視点と出会う教室 OriHimeによる交流型学習の実践

愛知県瀬戸市にある瀬戸SOLAN学園初等中等部(理事長:長尾幸彦)では、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を活用し、身体に障害のある方々との交流を目的とした遠隔授業に取り組んでいます。


【学校での活用方法】

北海道、九州、大阪に住む身体に障害のある男女4名のパイロットが、日替わりでチューターとして参加しています。はじめは、登校時に児童たちがあいさつを交わす、コミュニケーションのきっかけとして分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を活用し始めました。

子どもたちがOriHimeに慣れてきたタイミングで、「道徳」や「生活」、「プロジェクト学習」などの授業にも適宜取り入れています。学校では、「授業に同級生や先生以外の“大人の視点”が加わることで、子どもたちにとって新たな学びの刺激になるのではないか」との仮説を立て、この取り組みを試行し始めたそうです。

道徳の授業では、教科書教材『道夫とぼく』を使い、「誰に対しても公平に接することの大切さ」について考えました。
この授業には、福岡から参加したパイロットの亮さんがOriHimeを通じて登場。仲間はずれをしたこと・されたことの経験や、教材に関する問いについて、児童たちと共に語り合いました。

また、プロジェクト学習では、北海道在住のパイロット・由紀さんが参加。子どもたちが進めている、学校周辺の生き物を調べてまとめる「デジタル Nature Map」の進捗を報告したり、困っていることの相談に乗ってもらったりしました。ある男子児童が、タブレットで撮影した写真をOriHimeに見せながら「この写真はヒメカメノコテントウだよ」と説明すると、由紀さんは「どうやって名前を調べたの?」「北海道ではあまり見かけないテントウムシだね」と返答。質問に答えるために子どもたちが図鑑を開いて調べるなど、対話を通じて自然に学びを深めていく様子が見られました。

 

【教員の声】

パイロットの皆さんは、子どもたちにとても温かく語りかけてくださるため、子どもたちも自然と会話が弾みます。別のグループへ移動する際には、「もう終わりなの?」「次はいつ来てくれるの?」といった声が上がるほどでした。
日頃、長い時間を共に過ごしている私たち教員だけでなく、OriHimeを通じて遠隔から授業に参加してくださる方々など、多くの人が授業に関わることで、子どもたちは知識や技能だけでなく、感情の豊かさも育まれていくことを改めて実感しています。また、共に時間を過ごす中で、障害への理解も自然と深まっていくことを期待しています。

 

鳥取県教育委員会 OriHimeで学習保証を

今回は鳥取県教育委員会様にお話を伺いました!

鳥取県様には令和元年度から病気療養中の児童生徒の学習保障や円滑な復学のためにOriHimeをご利用頂いています!

「何故、OriHimeは児童生徒の学習保障に有効なのか。」

様々な事例も交えてお話頂きました!

OriHimeと学習保障

具体的なOriHime活用例

(鳥取県教育委員会 勝田様)

鳥取県では希望する公立学校にOriHimeを貸し出す「病気療養児の遠隔教育支援事業」を展開しています。

OriHimeの「離れた場所からでもコミュニケーションがとれる」という特徴を使って、

  • OriHime活用方法
    • 入院中の児童生徒が病室から授業等に参加
    • 病気療養中の児童生徒が自宅や病室から授業等に参加
    • 感染リスクが高く外出困難な児童生徒が自宅から校外学習に参加

など幅広いケースでOriHimeを利用しています。

名前

休み時間にOriHimeと他の児童生徒がいつものように仲良く話している様子を見ると、学習保障だけでない児童生徒自身のコミュニティ参加にも非常に役立っていると感じますね。

病気療養児×OriHimeの詳しい活用例

OriHimeを活用して授業参加している鳥取県の高等学校さまからもお話を伺いました!

鳥取県教育委員会から貸出という形でOriHimeを利用しています!

名前

教室にOriHimeを設置して、病気療養中の児童生徒がOriHimeを操作しながら、授業参加をしています。

OriHimeは病気療養中の姿を見せることなくコミュニケーションがとれるので、児童生徒の精神的な負担感も軽減することが出来ます。

名前

聴講型の授業の他にもグループワーク型の授業でもOriHimeを使っています。

グループワークの授業も効果的で、OriHimeの音声だけでなくアクションでも意思表示が出来る機能はとても有効です。また三次元の存在感もあるので対面で行われる児童生徒同士の会話にもよく馴染み、助かっています。

 

  • OriHimeの良い所
    • 病気療養中の姿を見せることなく友達や先生とコミュニケーションが出来る
    • ジェスチャーで意思を伝えられる
    • 存在感があるので児童生徒同士の会話によく馴染む
    • 自ら操作して見たい方向を見ることが出来る
    • 画面拡大機能を使えば板書等を見ることが出来る

 

名前

OriHimeは操作も簡単なので、児童生徒もすぐに使えるようになりました

このような授業参加がもっと広まってほしいなと思います。


高知県立大方高等学校 OriHimeで修学旅行に参加!

教育委員会 勝田様に聞く、OriHimeの魅力

学校に行きたくても行けない児童生徒への支援

病気や体調管理のため病気療養児には「学習参加の困難さ」や「体験機会の不足」があり、心身の発達、社会参加等に制約があります。
しかしOriHimeを使えば、病気療養中のため学校に行きたくても行けない児童生徒の支援が出来ると考えています。

病気療養中の姿を見せることなくつながれる

鳥取県では病気療養中の児童生徒にOriHimeを活用しています。自宅や病室からOriHimeを使っている児童生徒の中には自分の姿や自宅、病室の様子を見られることに抵抗感を感じる児童生徒も沢山います。

OriHimeはロボットとしてコミュニティに参加することで自分の姿等を見られず自然に空間を共にすることが出来るので、そんな児童生徒の大きな助けになっていると強く感じています。

児童生徒自身の参加意識が高まる

オンラインで授業に参加出来るツールは他にもありますが、なんといってもOriHimeの特徴は「見たい方向を見られる」「アクションにより存在感が増す」ことだと思っています。授業中は先生の方を見て、休み時間は話しているクラスメイトと目を合わせて話す、ということが出来るのでクラスを遠くから見ているのではなく児童生徒自身がクラスの中で学校生活に参加しているという意識を持つことが出来ているように思います。

今後の展望

授業参加の他にも、行事参加や校外学習、修学旅行など幅広く使っています。最近はOriHimeを導入している教育委員会も増えてきていると聞いています。「OriHime」の多様で効果的な活用方法を研究し、社会につながる子どもたちの育成につなげていきたいと思います。