分身ロボットOriHimeがひらく、自宅から社会とつながる道――長岡市の取り組みから見えた可能性

分身ロボットOriHimeがひらく、自宅から社会とつながる道――長岡市の取り組みから見えた可能性

掲載情報のご提供

長岡市

令和6年度から、ひきこもり相談支援室を開設し、ひきこもり状態にある当事者やその家族の相談支援に取り組んでいる長岡市。
 
その中で見えていたのが、「外出が難しい人への支援がまだ少ない」という課題でした。ひきこもり状態にある人の中には、対人コミュニケーションや他者との交流に不安を感じる人もいます。
 
そこで活用を始めたのが、分身ロボットOriHimeです。
 
自宅などの慣れた環境からOriHimeを遠隔操作することで、直接対面しなくても人と話し、社会とつながる。さらに、実際の接客や司会などを通して、社会参加や就労に向けた経験を積んでいく。
 
今回は、長岡市のご担当者様に、OriHimeを導入した背景や実際の活用、住民や職員、操作者の変化、そして自治体として描くこれからの可能性について伺いました。

自宅から社会とつながる。その一歩を支えるOriHime

── 分身ロボットOriHime導入の背景・きっかけを教えてください。当初、どのような課題意識と期待がありましたか。

名前

長岡市ご担当者「背景として、令和6年度からひきこもり相談支援室を開設し、ひきこもり状態にある当事者や家族の相談に対応しています。特に外出が難しい当事者への支援が少ない状況にあります。またひきこもり当事者は対人コミュニケーションに不安を感じたり、他者との交流にハードルを感じることがあるため、OriHimeを活用して、他者と直接対面しなくても、慣れた自宅から安心して社会とつながることを期待していました。
 
解決したい課題は、ひきこもり状態にある方や身体的な障害がある方、家族の介護等により外出が難しい方が、社会とつながることのできる仕組みを構築することでした。
 
DX推進の観点からも、場所や移動の制約によって支援が届きにくい方々に対し、デジタル技術を活用した新たな支援手法の可能性を検証する取組としての期待がありました。」

 
外出することが難しい。人と直接会うことに不安がある。そうした理由から、社会との接点を持つことが難しくなっている人たちにとって、慣れた自宅から参加できるというOriHimeの特徴は、大きな可能性を持っています。
 
一方で、実際に人と関わるためには、まず「OriHimeを通して話す」ということに慣れる必要があります。

話すことから、接客や司会まで。少しずつ広がった役割

実際に運用を始めると、すぐにすべてが順調に進んだわけではありませんでした。
 
── 導入当時、分身ロボットOriHimeをどのように活用していましたか。

名前

長岡市ご担当者「実際の接客に至るまでに、操作に慣れること、OriHimeを通して他者と話ができることを目的に、操作者と職員で練習をしました。
 
続いて、事務所のカウンターにOriHimeを置き、フロアのスタッフと対話をしながら、操作者が自信を持って対応できるよう練習を重ねました。
 
経験を重ねた後は、福祉の店『パレット長岡』で商品説明や接客をしたほか、長岡市ひきこもり支援セミナーのパネルディスカッションへの参加、長岡技術フォーラムでの司会業務も務めました。」

 
最初から接客や司会をするのではなく、操作に慣れること、そしてOriHimeを介して誰かと話すことから始めた取り組み。
 
少しずつ経験を重ねる中で、活動の場は事務所のカウンターから福祉の店へ、さらにセミナーやフォーラムへと広がっていきました。
 
その変化は、住民や職員、そして操作者それぞれにも現れていったといいます。
 

── OriHime導入から現在まで、住民の皆様や職員の皆様の受け止められ方にどのような変化を感じていますか。

名前

長岡市ご担当者「OriHimeを置く日時を固定したことで、顔見知りが増え、対話する回数が増えていきました。初めは遠くから見ていた住民や職員も、少しずつOriHimeに近づき、話をしてくれるようになりました。
 
約2か月継続して設置したことで認知が広がり、多くの職員が気軽に声をかけてくれるようになりました。OriHimeと話をすることで、直接対面しなくても、話をすることができることに驚いている住民がいました。」

 
最初は「見たことはあるけれど、どう接したらいいのかわからない」。
 
そんな距離感から始まった関係が、設置する日時を固定し、継続して顔を合わせることで変わっていきました。
 
そして変化したのは、周囲だけではありません。

名前

長岡市ご担当者「当初はあいさつや天気の話が多かったのですが、その後は操作者が話すセリフを決めたことで、住民や職員が話に耳を傾けてくれ、対話をすることができました。また自己紹介シートを作成し、操作者の趣味や好きなことを記載したことで、対話の話題とすることができました。時間の経過とともに、対話時間が増えていきました。
 
OriHimeを通して、操作者のみ相手が見えるという対面方法に、操作者は直接会うよりも緊張感が少ないと話をしていました。」

「今日はいないの?」顔なじみが生まれた先にあったもの

継続してOriHimeを設置したことで、住民との間には少しずつ「また会いたい」という気持ちも生まれていきました。
 

── 印象に残っている住民・来庁者の反応や、寄せられた声があれば教えてください。

名前

長岡市ご担当者「曜日を固定していたため、何度か話をしたことがある人が、『今日はいないの?』と話をすることを楽しみにしている人がいました。
 
子ども食堂の受付に置きたいという要望もありました。」

 
最初は珍しい存在だったOriHimeが、いつしか「そこにいる人」として認識されていく。
その変化は、操作者にとっても大きな意味を持つものでした。

名前

長岡市ご担当者「操作者として参加した方からは、『家族以外の方々とコミュニケーションを取る練習ができた』『商品を紹介し、実際に購入していただいた時は、仕事をしていると感じることができた』と話がありました。
 
操作者は始めは職員が近くにいて話をしていたが、慣れて、自信がついたことで、1人でも対応できるようになった方もいました。」

 
「話す練習」から始まり、誰かと会話をする。商品を紹介する。そして、実際に商品を購入してもらう。その一つひとつの経験が、「自分もできる」という感覚につながっていきます。
 
こうした経験を重ねる中で、自治体としても、OriHimeが担える役割について新たな可能性が見えてきたといいます。
 

── 職員の皆様からは、どのような反応や活用アイデアが挙がっていますか。

名前

長岡市ご担当者「一定の役割や話す内容が明確な業務との親和性が高いと考えられるため、会議や研修会の司会、案内係、カフェの受付などに活用できると良いと思います。」

 
接客だけでなく「何をするのか」「どんな役割なのか」が明確な業務であれば、OriHimeの活用先はさらに広がっていく。
 
それは、ひきこもり状態にある人や外出が難しい人が、社会と関わるための新たな選択肢にもつながります。

社会参加から、その先の「仕事」へ

── 自治体として、障害者就労支援や住民サービス等において、分身ロボットの活用をどのように位置づけていましたか。

名前

長岡市ご担当者「ひきこもり状態にある人にとって、分身ロボットを活用することは、社会参加や就労に向けた準備段階で、ゆるやかに社会とつながるための支援手法の一つと位置づけています。」

 
社会とつながることと、就職すること。
その間には、一人ひとり異なるペースや段階があります。
 
OriHimeは、その間をつなぐ存在として、まずは人と話してみること、役割を持って活動してみることから始められる環境をつくります。
そして、取り組みを終えた今、長岡市が見据えているのは、その先です。
 
── 今後の活用展望や、実現したい姿について教えてください。

名前

長岡市ご担当者「就職に向けた取り組みにつながっていけると良いと思います。仕事として賃金を得ることができると良いと思います。」

 
── 導入を検討している他の自治体の読者へ、メッセージをお願いします。

名前

長岡市ご担当者「ひきこもり状態にある人で、エネルギーが回復した状態の人にとって、OriHimeを活用し、他者と対話をすることは、自信をつける良い機会になると思われます。
 
ひきこもり状態にある人だけでなく、障害者や外出困難者にも対象を広げ、自宅から社会とつながることができ、さらに仕事として賃金が得られる仕組みが構築できると良いと思います。
 
OriHimeによって外出困難者と地域社会をつなぐ取り組みは、自治体が目指す『誰一人取り残さない』地域づくりや共生社会の実現に寄与する可能性があると感じています。」

 
「外出できないから、社会とつながれない」。
そんな状況に対して、自宅からでも人と出会い、会話し、役割を持てる仕組みをつくる。
 
長岡市での取り組みから見えてきたのは、OriHimeが単なる「遠隔操作できるロボット」ではなく、人と社会の間に新しい接点を生み出す存在だということでした。

まずは話してみることから。
そこから、自信をつけ、役割を持ち、そして仕事へ。
 
一人ひとりの歩幅に合わせた社会参加の形を、テクノロジーが支えていく。OriHimeの活用は、その可能性を示す一つの方法となっています。

OriHimeの活用について、
お気軽にご相談ください。

どこにいても、“そこにいる”体験を。
仲間と同じ時間を共有し、自分らしく働ける。
活用方法や導入のご相談は、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
OriHime